提言: わたしたちは 37.5度の発熱を病児扱いせず、保育園で責任をもってお預かりします。

 保育園や幼稚園にお子さんを預けていて、『37.5度以上の熱が出たから、すぐに迎えにきてください。翌日は大事をとって園を休むようにしてください。』、そのように保育園の先生から指示されて、翌日にはお子さんの体調が落ちついたんだけど、やむなく保育園を休ませて、仕事も休んだ経験のあるお母さんや、お父さんたちが今なお数多くいらっしゃいます。

 核家族化や共働き家庭がふえつづけ、ワークライフバランスがもとめられている社会で、24時間保育や英語保育などをうたう 『あたらしい形の保育園(?)』がつくられ続ける現在でも、上記のような状況が変わっていかないのは不思議ですね。

では、なぜ 「37.5度」でお迎えや園を休むことを強要されるのか、その根拠はあまり知らされていない現状があります。


 厚生労働省が改訂し、保育園の保育士が子どもを保育する際の基準とする学習要領でもある保育所保育指針や、それぞれの市町村にある保育園の運営基準などをたぐっても、「37.5度以上で(お迎えの要請もふくめて)保護者に連絡する」旨の記載はあっても、肝心の、『37.5度』の数値を基準に、なぜ一律に、お迎えをしていただき、園を休んでいただくといった対応になるのか、その明確な理由を記載している資料はありません。

 結局、推測するしかないのですが、その対応の根拠は、医師法と薬事法で定める医師免許をもつ人間以外の「医業の禁止」と、保育所保育指針にあった以下の項目が深く関係しているものと考えられます。

4 疾病異常等に関する対応 (出典:保育所保育指針 第12章 健康・安全に関する留意事項)
(1) 感染症
ア 保育中に、感染症の疑いのある病気の子どもを発見したときは、嘱託医に相談して指示を受けるとともに、保護者との連絡を密にし、必要な処置をする
イ 保育所で、感染症の発生が分かったときには、嘱託医の指導の下に、他の保護者にも連絡をとる。感染症にかかった子どもについては、嘱託医やかかりつけの医師の指示に従うように保護者の協力を求める。特に、いわゆる学校伝染病として定められている病気にかかった子どもが保育所に再び通い始める時期は、その出席停止期間を基本とし、子どもの回復状態に応じて、他の子どもへの感染の防止が図られるよう、嘱託医やかかりつけの医師などの意見を踏まえて、保護者に指導する。また、学校伝染病に定められていない感染症については、嘱託医などの指示に従う。

では、なぜ 『37.5』という数値が境界になるのでしょうか?それはウィルス感染発症の目安だから

 乳幼児(0歳の赤ちゃんから6歳ぐらいまでの子ども)の微熱、発熱が何度からか?という問いに明確な答えはありません。

しかし目安として、わきの下で測った場合に37度以上、口で測った場合に37.5度以上、直腸で測った場合に38度のときに、一応、医療関係者の中で「発熱」と考えられているようです。これも、個人のもつ基礎体温の差や、熱を測る器具や環境によっての差も含まれて出てくるため、あくまでも目安でしかありません。

 そして、ここからがこの章の本題ですが、子どもが熱を出す多くの理由は、ウィルス性の病気にかかった際の正常な反応だとされています。だから先の「発熱の目安」にしたがい、最近では分かりやすいように、わきの下であっても(口腔内で測った場合と同様)、一般的に 37.5度以上の発熱があった場合には、ウィルス性の感染症(多くが風邪)が発症されたことをお医者さんは考えます。

この医者の考え方を基礎にして、「感染の防止」が保育園ではかられているわけですね。
まずは、ここまでを保育園側は理解して、保育士はお母さんたちに、最低限の説明責任をはたさなければなりませんが、できていないのが現状でしょう。

なぜ?と納得いかないまま、でも預かってもらっている園に言われて、仕方なく指示に従っているというお母さんが、たくさんいらっしゃるのが現状だからです。

 保育園や幼稚園で働く先生たちのために、もう少し付け加えるならば、お預かりしているお子さんの熱を測り、もし「37.5度の発熱があった=園児がウィルス性の感染症を発症した」ということを思ったのだとしても、はっきりと決めつけることは、医師法で定めるところの『診断』にあたり、それこそ保育士など医師ではない者が行ってはいけないこととして禁止されています。

ですから、本来、「お迎えと翌日のお休み」を強要する権限はなく、あくまで、感染症にかかった疑いが考えられ、お子さん自身の健康上の問題と、他のお子さんへ感染する可能性を最大限防ぐことを目的として、保護者の方々に感染の可能性をご理解いただき、帰宅と安静をお願いする立場にあるということを、もう一度、確認しておきましょう。

 意外に、連絡すれば当たり前に子どもを連れて帰ってもらえると考えて、日ごろ保育している保育士がとても多いものです。

子どもの熱は数値だけでは測れない!だからこそ、保育士にとって果たせる役割があります

 ここまで、37.5度の発熱があったときはウィルス性の感染症にかかった可能性があるから、保育園では感染の防止のために、保護者にお迎えに来ていただき、翌日は休んでいただく対応をするといった話をしてきました。

しかし、本来の保育園や保育士の役目は、その可能性も視野に入れつつ、日ごろから子どもたちのカラダの変化、体温の変化から、ある程度、慎重でありつつ適切に園で見守りつづけることもできなければならないのではないでしょうか。

 赤ちゃんの睡眠サイクルが大人と全く違うように、カラダの体温を調節する、その仕組みも子どもと大人では大きく違います。子どもは一日一日成長し、その変化にともなってカラダの中で細胞や血液を入れ替え、カラダに不必要なモノを排出していくなどといった回数が多く、そのぶんエネルギーを使って、たくさんの熱を放出するので、自然に大人より高い平熱になることが考えられます。

加えて体温は日中の変動がはげしいものです。特に生後3カ月あたりからリズムが作られ、午後1時から3時に最高、午前1時から3時に最低になることが予想されます。

 また、子どもは大人と比べて、気温や体温の上昇に応じて適切に汗をかくなどといった、上手に熱を外に逃がすような機能が、まだうまく働かないようなところがあります。そういった、うまく熱を逃せず体内にたまってしまった熱のことを、「うつ熱」といいますが、炎天下などによる室外の熱や、運動の中からの熱などで体温が上昇して、その後、平熱に戻るまで時間がかなりかかることも日常的にあります。

 日中かなり炎天下で運動して帰ってしんどい・・と熱を計ると37度後半。でも、水分をしっかりとって、ゆっくりと休息し、食事をとるなどしたら、普段どおりケロッと元気になって、数時間後体調も熱も元に戻ることもよくありますよね。

要するに37度から38度前後の突発的に出た熱とか、 一時的な熱とかは、熱の数値だけでなくて全身を見て、その前後にどのような環境で過ごしどういった行動があって、その全体の変化がどのぐらいの時間つづいているのかを見る目がなければなりません
熱が高くなった前後に下痢や嘔吐はないか、食欲はあったか、朝から尿や便通はどうか、水分をとっているか、運動は今日どうであったか、日中やお昼寝前後の温度はどうか、厚着をさせてないか。時間とともに元気がなくなるといったようなことがなかったか、などなどがポイントとして挙げられますね。

 発熱も風邪やその他の疾患というより、熱疲労の結果とか、うつ熱(熱がこもっている)せいかも知れないのです。それと日ごろから平熱はどうかと言うことも、毎日一回測っているから、それで安心!ではなくて、成長が見受けられるたびに、1週間ぐらいの間につづけて、活動の変化の合間・合間に平均的な体温を計って把握しておくことも大切な役目ではないかと考えています。

子どもたちの命をお預かりしている自覚をもって、日々子どもたちと接し保育をしていきます

 では、37.5度以上の体温上昇を目安に、保育所保育指針で「感染症の疑いのある病気の子どもを発見したときは、嘱託医に相談して指示を受けるとともに、保護者との連絡を密にし、必要な処置を」することが望ましいとされているし、薬事法に関連して、保育園で保育士が子どもに薬を飲ませていいものか、飲ませないほうがいいのかも、園によって対応が別れるような現状で、医師法で禁止されている『医行為』にあたりそうなことを行なっていいのかどうか、不安がぬぐえない!という保育園関係者もいることでしょう。

 その不安の答えのひとつとしては、次のように関連した政府広報室の見解が見受けられます。この政府広報室の見解は、高齢者と接する立場の介助職に対するものであり、高齢者に対する介護・介助職については、日ごろから高齢者のカラダに直接触れて、その対応しだいでは命の危険と直結することから、保育とくらべても医行為との区別が、現場でもっと明確にされています。

 それであっても、同じ人と人とが日常的に接しあう仕事であって、子どもや高齢者といった相手に対して、生活を支援し、同じ命の重みというものを脊負うという意識のもとにおいて、参考にするべき見解とすることに間違いはないと思われます。

(出典:内閣府大臣官房政府広報室「国政モニター会議」)
 医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある「医行為」については、患者の生命・身体に及ぼす危険性にかんがみて、医師、看護師等医療関係資格を有する者が行うべきものと考えており、医療関係資格を有さないホームヘルパー等が業として行うことは認められておりません(「業として行う」とは、「反復継続の意思をもって行う」ことであると解しております。)。
 ただし、要介護者の状態に急変が生じた場合で医師、看護師等による速やかな対応が困難であるとき等において、医療関係資格を有さないホームヘルパー等が緊急やむを得ない措置として「医行為」を行うことは、それが業として行われるものでない限り、医師法第17条(医師でない者の医業の禁止)に違反するものではありません
 ある行為が「医行為」に該当するか否かについては、個々の事例に即して、当該行為が患者の生命・身体に及ぼす危険性を勘案して判断する必要があると考えており、御指摘の1から6までの行為についても、個別具体的な行為の内容に即して判断する必要があると考えております。


 わたしたち保育にたずさわる人間は、日ごろと比べて体温が異常に変化している子どもを観察する場面において、熱が 「高ければ高いほど子どもの病状が危険であるという思い込み」を捨てて、子どもたちの体調をしっかりと見届けることも忘れてはなりません。熱が出ていなくても、出たときと同様に保護者のみなさんのお迎えを必要としたり、医療機関に子どもを搬送することが必要なときがあります

そういったことも、適切に保護者の方々にご理解いただけるように努め、わたしたちは安易に 37.5度の発熱だけをもってして、お子さんたちを病児扱いすることなく、子どもたちの命をお預かりしている意識の上に保育園で責任をもってお預かりさせていただくことを誓います。

2008.05.03 by NOT37.5℃

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